SS3A感想 後編 ―― 前橋市コラボが克服した、地方都市のお店が抱える課題

THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS SS3A Live Sound Booth♪」に参加された皆様、お疲れさまでした。
 前の記事では、ライブイベントそのものの感想について述べました。この記事では、本公演開催にあたり実施された、前橋市とのコラボレーションについて、その感想を述べたいと思います。

 私は、以前、前橋市に仕事の関係で訪れたことがあります。しかし、そのときに受けた前橋市の印象もあり、私はこんなツイートをしていました。

 ところが、SS3Aの開催が近づいてきたある日、突然、前橋市とのさまざまなコラボレーション内容が発表されました。瞬く間にインターネット上は沸き立ち、ライブ開催期間中の前橋市内の盛り上がりもすさまじいものでした。ライブ直後の前橋市長の記者会見でも、それについて述べられていましたね。

 前橋の地元民から見た今回の盛り上がりの感想については、以下のはてな匿名ダイアリーの記事に端的にまとまっています。実際のところ、地元民でも街に何もないと感じていたようですし、その上で、今回の盛り上がりが素晴らしいものであったことがうかがえます。

 地元にシンデレラがやってきた

 さて、私も青森市という地方都市の住民なわけですが、同じく地方都市である前橋市の今回の様子を見て、地方都市のお店が観光において抱える課題が何なのか?というヒントが見えてきたように思います。

 東京のような大都市圏で、人が集まるお店について考えてみると、テレビでの紹介、SNSでのバズり、SNSでのバズりを受けたインターネットメディアによる紹介、紹介とバズりの連鎖……というようなことが起きているように感じます。店の名前で検索すれば、どんなものが売っているのか、店内の様子はどうか、店はどこにあるのかといった情報にすぐ到達できます。実際に店に行けば、人が集まっているので、その時点で店に入ることに対する抵抗感というものはなくなります。
 一方、地方都市のお店について考えてみると、いくらいい商品を提供するお店であっても、メディアへの露出が少ない、インターネットで取り上げられることもない、お店の名前で検索して食べログを見ても、住所と電話番号しかわからず口コミがひとつもない、定休日の記載もないから行く日にやってるかもわからない、あげく、実際に店の前まで来ても、通りに面した店のドアはすりガラスで店内の様子は窺えない、店外にメニューもないから価格もわからない、こういう状態では、店に入ることに対する抵抗感が消えません。
 地方都市のお店が抱える課題というのは、このように、事前に知ることができる情報が限りなくゼロであることだと思うのです。実際は「何もない」というのは間違いで、魅力的なお店がたくさんあるのかもしれないけど、情報が入ってこなければ、「何もないように見えてしまう」のです。

 その上で、前橋観光コンベンション協会が作成した「前橋まちなかMAP」(リンク先2018/9/17まで有効)を見てみます。オモテ面は、細かなネタを仕込みつつアイドルの配置までこだわったという地図。小さな吹き出しをつけて、できるだけたくさんのお店について紹介がされています。裏面は、前橋市内の豚肉料理店の一覧。私も含め、多くの方がこれを見て初めて「前橋市は豚肉推しの街」だということを知ったのではないでしょうか。こういう書き方をされると、だったら前橋市内で何かしら豚肉料理を食べよう、という気持ちになってきますよね。このMAPは、さまざまなお店についての情報が、いまどきの役所が使いがちな言葉で表現すると「ワンストップ」でわかるものに仕上がっているため、前述の課題を克服することができたものと思います。

 今回の前橋市の事例については、私がここで述べたこと以外にも、シンデレラガールズというコンテンツが持つ文脈を生かしたりだとか、そういうさまざまな要素が複雑に絡み合った結果だと思いますので、簡単に真似してうまくいく、というものではありません。壮大なボリュームであっただろう準備活動、それを見事に結実させた前橋市および関係者の皆様、お疲れ様でした!